既に実施を終えましたが、
コミティアX4(通常開催の同人誌配布会
コミティア110 の文化祭版)で、 [PIN] という企画を実施しました。
東孝光さんの自邸でもある
『塔の家』の1/5模型を即日製作する、というものでした。
キラー通りに刺さっているマップピン『塔の家』を、ビックサイトにも刺して、東京オリンピックの記憶を繋いでみたい。

東京オリンピック(1964年)に合わせた東京の都市改造。その一環として作られた、キラー通り(「外苑西通り」の青山霊園角から仙寿院交差点までの区間)に面して、「塔の家」(設計者:東孝光、1966年)は建っています。
これを、東京の街に刺された記憶のPINのひとつだと考えました。
東京オリンピック(2020年)では、東京国際展示場(東京ビックサイト)も大会施設として活用する予定です。
提案書では、今回のコミティアX4の開場である東4・5・6 ホールは、フェンシングとテコンドーの競技会場、この他の部分はメディアセンターとされています。
コミティアX4の会場にも「塔の家」を刺すことで、キラー通りとビックサイト、2つの場所が抱える記憶を繋げてみることにしました。
『塔の家』は、日本のモダニズム住宅を代表する物件の一つです。
『塔の家』の設計図面は、建築教育の場で実習教材として広く使われています。今回は、
藤木竜也さん(建築史、千葉工業大学准教授)の制作された切り紙模型(縮尺1/70)を原型に、縮尺1/5の模型としました。元にする模型は、形態を把握することを主にして、内部の構成も把握できるものです。会場で作製するのは、そこから更に内部の構成を省いて形態のみを把握するもの(ボリュームモデル)でした。ちなみに、縮尺1/5の『塔の家』模型の高さは2m程度、ビックサイト東展示棟展示室の天井高さは17mから31mあります。この会場にあっては、ちいさな模型です。
製作した『塔の家』ボリューム模型は、製作の途上においても完成時のボリュームを把握して頂けるよう、壁構造の現物とは異なり、柱軸組構造をとしました。柱軸組み(
2011-13に米子高専で実施した実物大家具模型の即日製作課題『マーリをつくって』と同じ工場生産のダンボール短冊材)に外壁(ダンボールの外皮)を貼り付けました。このうち、外皮のダンボールは、各サークルさんから廃棄(資源回収)される送り箱(印刷所さんが刷り上がった同人誌を開場へと搬入する際につかうダンボール箱)を利用ました。この日、ビックサイトで起きていること、同人誌配布会の欠片を纏わせることで、そのつながりを強くしたいと考えました。
東京オリンピックの実施される2020年に向けて、私たちの個人的な同人活動さえも、東京オリンピックに巻き込まれていく、という意味も含めて。
なお、この模型はコミティアX4の閉会と同時に解体、再び廃棄(資源回収)しました。
今回の当日実施について、サークル「スイーツエンジン」さんから全面的な協力を頂きました。
また、コミティアX4 [PIN]の配布物として『蒼天日和10 PIN』を作製し、無償で配布をしました。これの配布について、複数のサークルさんにご協力を頂きました。
心から御礼を申し上げます。ありがとうございます。
『蒼天日和10 PIN』は、片面がコンセプトイラスト、もう片面が『塔の家』の物件解説になっています。
コンセプトイラストは、
オンラインの漫画誌 GANMAで建築漫画
『紺色のまち』を連載中で建築士でもある
TSUBU さんです。
物件解説は、原型の制作者でもある藤木竜也さんです。なお、『塔の家』を設計された東孝光さんは、藤木さんと同じ千葉工業大学で教鞭をとっておられました(工業デザイン学科教授)
なお、TSUBUさんにコンセプトイラストをお願いしたのには、具体的な意図がありまして、どういうことかと申しますと、
この辺り(鹿島出版会さんが発行されていた建築雑誌『SD』の1988年3月号)に回答があります。このことは、TSUBUさんも実施当日までご存じなく、頂いた成果品を見て当方が「ほおおおおお」と思ったこともご存じなく。
以上、ご報告でした。
実施当日に立ち寄って下さった皆さま、ありがとうございます。
現場で説明しましたように、この模型は、当日中に完成させることが最終的な目的ではありません。
ご覧になった皆さまが、実際にキラー通りにある『塔の家』へ行かれて、ああこれか、と思われることで完成します。
本物の『塔の家』に会いに行って下さい。そして、ビックサイトにも『塔の家』が建っていたことを思い出して下さい。
*追記
藤木さんがご自分のブログで [PIN] についての記事を書かれました。解説文の全文が掲載されています。