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正直なところ、これまで見たことのない形をした椅子です。
デザインテーマはWILD、前に突き出された棒は
股を開いて前に投げ出した足首を引っかけてオットマン(脚台)として使います。
たとえジーンズ姿であっても女性は試してはイケマセン。
そのことに気がつくまで「棒の間にもロープ編みを取り付ければオットマンになるのに」とか軟弱なことを考えていたのは秘密です。
棒を組み合わせた構造とか、座面の考え方などは杉田さんのblogをご覧下さい。
腰骨を横に渡された棒に引っかけて身体の位置を決めて、ロープ編みの座面に体重を預けるような座り方になります。仕掛け人は想定身長に近くウエストの高さも想定内だったようで、ヘッドレストの位置も適切でした。
素直に座った状態でも背中全体を支えられて若干の浮遊した感じを体感できますが、オットマンに脚をかけるとそれがハッキリとします。
2本あるアームは下の位置が適切かなと思いました。
座るとアームの先に水平に断ち切られた前足が見えていて、どこかモーエンセンさんっぽい感じを受けますが、全体のイメージはウェグナーさん、つまりはデンマーク家具の王道を行っています。
この椅子の見所はそういったことではなくて細部にあると感じました。
背と座はロープの網で出来ていて、ロープ同士の交差するところはシンチュウのパイプを被せてあります。
そのパイプをよく見ると、切っただけ、または切り口の角を微かに落としただけではなく
切り口よりも随分と手前からゆるい角度で面が取られていて、角部分も丸めるまでにはいかない、シンチュウという柔らかめの金属の持つとろんとした材質を生かす角処理がされています。
これによって背中に金物が当たったときの異物感が押さえられています。
ロープと馴染むとでもいいましょうか。
実はそんな細かい部分の気遣いというか拘りが北欧、特にデンマークの家具について、たとえ工場で量産されたものであっても高い品質感を手放さない理由だと感じています。
そういった椅子を日々修理し続けていらっしゃる杉田さんの指先が作った椅子だと、とてもよくわかるロープ止め金物でした。
今年はデザイナーズウイーク・イン・名古屋の参加イベントではありません。
ナディアパークの中央吹き抜けスペースをゆったり使っての展示です。
上階からは展示されている椅子達の平面形状もみることができます。

右の列、上から2番目の椅子。
椅子から前に向かって棒が生えてます、棒が。
それが杉田英紀さんのbreeze chair です。
<以下続く>
libereさんの商品をGLEAMさんがリフォームしてDOORさんのお店を会場に展示会を、最終日にはファッションショーを開かれました。

そのうちで展示だけを拝見しました。
会場に入ると書見台にサラ・ムーンの写真集が置いてありました。
90年頃の渋谷ではこの方の写真展とか映画とかを見ることができました。
サラさんは写真を意図的に古く見せる手法を用いています。
オリジナルのプリントを見た記憶では、ポラロイドのピールアパートフィルムのネガにノイズを加えてシルバーゼラチンプリントを作成しセレン調色をしているように見えます、が見えるだけかも知れません。サラさんはニコンのカメラをお使いだと聞きました。
写真の内容もレトロな感じがしますけれど、それでいてどこか現代的な解釈を感じさせるものです。
単なる復古でもないし、かといって作りすぎてもいない、だけれど見れば確実にサラさんの写真であることを主張してきます。
書見台の反対側には衝立が立てられていてその奥は見えにくくしてありました。
天井には縮れた糸がまるで入場者を絡め取るかのように張りめぐらされて奥の壁から床に向かって降りています。その間には靴の影。床には靴底の影。
衝立の向こうには天井からの糸の先に白いドレスをまとったボディが置かれていました。
糸を紡ぎ織り形づくる先にあるもの、といったことでしょうか。
そのちょっとレトロな感じを受ける(実際に古いものなのでしょうが)フォルムのドレスはレースなどでアレンジがされていました。
本とドレスの二つには繋がる思いがあるように思えました。
最終日のファッションショーは拝見していません。
見に行かれた方からは「秋の夜長にしっとりといい感じ」だったと聞いています。
『しっとり』と感じられたのが「解釈」された部分だったのではないかと思いました。
その様子は後日DVDになるそうです。
畑尾さんは大阪のカフェなどで販売されている小冊子「fantastic something」の表紙を担当されていて、今回は表紙原画の平面コラージュが50点展示されています。50冊分。
SOUKAのメカダさんは「どこでそんなの見つけてくるんだろう」という物事をギャラリーに連れてくるのが得意ですけど、今回はなんともびっくりしました。
大阪の数カ所でしか手に入らない冊子なんて、どうしてそんなの知ったんですか?という。
小さめの冊子なのですがその原画はA3くらいの大きさがあります。
会場の壁面にそれらが遮るものなく掲げられて、数枚だけ額装されています。
コラージュの材料は主に布とフェルトに編み物といったところで、それに刺繍が施されたり、針金とかの金属を重ねたりしてあります。あまり厚みは感じません。
材料の取り合わせ、色の取り合わせの妙が心に残りましたが、おそらく自分で針を使ったりされる方はもっと別の見所があるのでしょう。
これはミックスドメディアのイラストだなと思いました。
なお50冊の冊子は会場で手に取ることが出来るようです。
会期は10月31日まで。

京都、高瀬川の畔に京都・タチバナ商会さんはあります。
初めて行ったのは6年くらい前でしょうか。
昔の和の照明器具を扱う専門店はここ一軒なのではないかと思って出かけました。
webをご覧になるとテキストに驚かれるでしょう。
代表の四代 佐藤成正さんご本人は静かに落ち着いた大人の方です。
店舗もwebのような感じの展示が展開されています。
あまりの数の多さに目移りしますけど、どれも物が良く、しっかりと手入れされていることにも気がつくでしょう。
これらの照明器具は京都の町が抱えてきた文化資産とでもいうもので
その殆どは京都の町屋の天井からタチバナ商会さんへやってくるそうです。
タチバナ商会さんの建物は、炭の商いをしていらした頃に倉庫として使っていたものだとお聞きしました。
お互いに時間を経た照明器具と建物の馴染みぶりも納得のいくところです。
年に何度か手書き原稿で一度見たら忘れられないお葉書を頂きます。
今回はインストアライブみたいですね。
新居さんの椅子を初めて見たのは新聞広告でした。
その頃、クムルスの中の人は中学生くらいだったでしょうか。
自分で初めて意識した椅子でした。
ソニーが運営しているセレクトアイテムの通信販売カタログでLightUpというのがあります。
以前はソニーファミリークラブといって、70年代頃にはちょっと珍しいセレクトアイテム専門の通販会社でした。
その会社が繰り返し新聞広告を出していたのが新居さんのニーチェアでした。
日本人デザイナーの手による日本の量産家具がニューヨーク近代美術館の収蔵品となったことと、日本酒を絞る布を使った座面であることが誇らしげに書かれていました。
少なからず、その頃のソニーのあり方と重なるところがあったのかもしれません。
それから数年後にはオーディオリスニング用の椅子としても知られるようになりました。
細いパイプに座面が布一枚という構造が音を汚さない、という理由らしいです。
ニーチェアと言われる椅子はいくつもあります。
なかでもニーファニチャーの製造するX型が最も「らしい」と思います。
共通するのは、パイプのフレームの交差点をボルト止めした軽量な構造体と一枚布の座面です。
例外もありますけれど基本的に折りたためます。
また床との接点はパイプもしくは木の構造材を横に使っています。
これらの特徴は日本の住環境を意識したものだということです。
ちゃぶ台とか布団とかに共通する畳の上のくらしを見据えています。
参考*山葉文化椅子
参考*家具屋さんから見たニーチェアの分類
ゴムのブッシュ類、部品同士を繋いでいる接着剤も同様に劣化しています。
座面のクッションなどは風化が進んでいるかもしれませんね。
そのような椅子を普通に使う、とは、いたわりのある扱いと管理を心得えて無事に過ごす、といった意味あいです。
普段使いにするのであれば、環境対応素材でリプロダクトされた椅子のほうが好ましいでしょう。
オリジナルは薄暗く温度も湿度も押さえた部屋で劣化を遅らせて次世代に伝えて下さいませ。
このところ雑誌などで取り上げられる機会が増えてきたヨーロ・クッカプロさんはフィンランドのプラスチック椅子デザイナーと認識されています。
クッカプロさんは70年代には自然素材を使うことに回帰していますので、樹脂系の椅子でオリジナルと言われるものはそれまでに製造されていると考えるべきでしょう。
まあ製造後40年は経っているわけです。
クムルスはクッカプロさんが70年代から80年代にかけて手がけたプロダクトを好むので、呆れるほど手元に置いても、プラスチックのものはこれまで一つもありませんでした。
ある日、ふらりとt.a.l.o.さんに行きました。
そして一週間後。

で、何ですかこれは。
脚はアルミの鋳物なので問題なし。
本体はところどころエッジの塗装が欠けています。未塗装側は樹脂が気持ちベタつきます。脚とボルト締めする周辺はよく見ると細かいクラックが入っています。
それでも全体として程度は良好といって良いでしょう。
問題なのは本体に埋め込まれているナットの山がなめていること。
脚を取り付けるボルトが最後まで締まらず、本体と脚とが浮いたような状態のまま使われたために想定外の力がかかりクラックが発生したみたいですね。
ナットにタップを立ててネジ山を切り直して新しいボルトをねじ込むと、ちゃんと締め付けることができました。

で、組み上げる。
赤茶色のバックスキンも似合ってます。
ちょっとおとなしい配色のSaturnus Cですね。

スチールパイプと布で構成されたこちらの椅子Pressuは
クッカプロさんによってSaturanus Cよりも3年ほど前に原型が作られ
Saturanus Cより3年ほど遅れて製品化されました。
この2脚は、座り比べても本質的な差が感じられません。
クムルスは最小で最善をつきつめた成果を大事にします。