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蒼天青雲は、鳥取県日南町さんからお声がけを頂き、草壁さん(KusakabeWorks)と組んで、ペットボトル水「まめな水」のラベルの制作を担当しました。

『草壁(KusakabeWorks)氏は、失われた菅沢集落の姿を絵筆で日南湖の水底に甦らせた
- 国道180号線は、赤い本山橋で日南湖を跨ぐ。
日南湖は菅沢ダムの貯水池であり、この一帯には菅沢の集落があった。ダムの保守工事のために水を抜かれた日南湖の底に、菅沢の集落の痕跡が現れた。』
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 鳥取県日南町さんは、鳥取大学との連携事業のひとつとして医学部講師 祝部大輔さんと「日南町のおいしい水と名水調査」を続けて来られました。その成果の一つが「日南町名水マップ」で、これを元に選定した自然水をペットボトルに詰めて広く供給する事業が「まめな水」です。
 山深い辺りに広がる鳥取県日南町さんの水道(簡易水道)普及率は約70%で、水源の多くは井戸水です。残りの約30%は、各家が持っている井戸の水を上水として利用しています。
この一帯は、古くから良質な鉄(たたらによる鋼)の産地として知られ(天叢雲剣[草薙剣]が顕れたとされる船通山も近隣にある)、原料である良質な砂鉄(真砂砂鉄)を多く含んだ土壌であるため、地表から浅い場所の水は「赤水」です。上水に使えるのは、多くの場合「赤水」の出る層の下にある岩盤を貫通させた井戸の水です。場所によっては100m程も掘るとお聞きしました。鳥取県日南町に暮らす方々と水との関わりは、農業、林業、漁業を含めて予想以上に深いのです。

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 『日南町x草壁』は、[蒼天日和06]の表紙をご覧になった日南町さんから、蒼天青雲へ「ペットボトルのラベルデザインをお願い出来ないだろうか」と問い合わせをされた事からから始まりました。
 [蒼天日和06]では発電所について特集し、日南町さんの関わられている発電所を典型的な例として収録しました。この号の表紙は、蒼天青雲が撮影した日南町さんの関われている古い小水力発電所の建物の画像に、草壁さんが人物のイラストをコラージュしたものでした。

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 問い合わせを頂いた時点で、ペットボトルに詰める水の採水場所は決まっていたものの、ラベルについては白紙の状況でした。あえて蒼天青雲と組んでつくるのですから、近刊を通じての課題である「風景/光景と記憶」を元にしたい、つまり「土地の記憶と繋がりのあるラベル」を作ることを提案しました。その場で思いついた幾つかを話つづけたところ、日南町さんから「今回の採水地が立地している大宮地区には、本山橋と日南湖がある」との言葉がありました。蒼天青雲は、菅沢ダムの改修工事に伴って水の抜かれた日南湖(ダムの築造に伴って1960年代にできた人工湖)の湖底に、菅沢の集落の遺構が現れているのを本山橋の辺りから通りすがりに見ていたので、橋と湖と失われた集落を組み合わせてはどうか、と提案をしました。
 この流れから「本山橋の橋の上から水底にある菅沢の集落を笑いながら見下ろしている日南町の子供たち」というラベル絵の概要と、ラベルを見て菅沢の集落から集団移転をされた皆さんに集落のことを思い出して頂けたら、記憶の糸を繋ぎ直せたら、という趣旨が導かれました。

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草壁さんは、日南町さんと打ち合わせを始めてから3回
 「萌えキャラを利用した町興しではありませんよね」
と確認をされました。
日南町さんは3回
 「ちがいます」
と答えられました。
草壁さんが提出された初稿は、山と湖の向こうに赤い本山橋の架かる情景で、人物の姿がありませんでした。
日南町さんは
 「見たいのはこの絵ではない。
  草壁さんが主に風景を描いていらっしゃるというのは後から知った。
  『本山橋の橋の上から水底にある菅沢の集落を笑いながら見下ろしている”日南町の"子供たち』を描けるのは、
  草壁さんしかいない。
  だから、その絵を描いて頂きたいのだ」
と返答をされました。
草壁さんは、初稿を生かしつつ、本山橋から湖底を見下ろす人物を含めた3面続きの絵を組み合わせた第二稿を提出されました。

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 草壁さんは日南町を訪れたことがありません。また、日南湖の底に沈んでいる菅沢の集落には、石垣などの輪郭を残すばかりで、建物の姿はありません。日南町さんから提供された失われた菅沢の集落のモノクロ写真が数枚と、蒼天青雲の撮影した干上がった日南湖の画像だけを手がかりに、菅沢の集落を描いて蘇らせました。
 蒼天青雲は「菅沢の集落の姿」を写すことが出来ませんが、草壁さんならば蘇らせることが出来ます。ここに、蒼天青雲が草壁さんと組まなくてはならない理由があります。
 この「蘇った菅沢の集落」は草壁さんの想いの中にあるものです。よって、本山橋(赤い橋)の欄干の意匠などは実際とは異なって描かれています。
 草壁さんの中でも「蘇った菅沢の集落」には揺らぎがあり、その結果、製版を終えた凸版と特色インク(今回のラベル印刷は5種類の特別の調合したインクを塗ったハンコを重ね刷りして行われました)を用いた色校正(実際にラベルを印刷する前に試し刷りをして色などの再現状況を確認する)の段階で修正稿が提出されました。このため、もう一度、特色インクの組み合わせから工程をやり直しました。関係された皆様には大変なご迷惑をおかけしました。ですが、新しい版で刷り上げた結果について、関係された皆様から「明らかに修正稿の方が商業製品のラベルとして優れている」と言って頂き、手戻りの必然にもある程度は理解をして頂けたようで、安堵しました。
なにより、商業印刷の世界で百戦錬磨の皆様の評価だったので、嬉しかったです。ありがとうございます。
 
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 たとえ日南町を知らない人との間ででも、このラベルを通して菅沢の集落の記憶を共有して、その結果、いったい何とどう繋がるのか?にも興味がありました。
 草壁さんの描かれたラベルが、予想もしない人の手元に『まめな水』を届けてくれるのではないか、これまで全くご縁のなかった人と水を通して繋がることが出来るのではないか、そんな「人の記憶を繋ぐことの出来る水」であって欲しいとも願いました。
 日南町さんは、草壁さんの描かれた絵の力を信じています。

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 同人サークルにとって、食品系の配布物は法律・条例などとの関わりもあり、手を出しにくい分野です。
とても小規模でマイナーなジャンルの同人サークルが、商業化されていない自然水を詰めたボトルの制作に関われるとは思いもしませんでした。
 このような機会を与えて下さった日南町さんへ、御礼を申し上げます。
 
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 ここまで企画を走りきって感じているのは「他所から来た人にしか見えない何かも多いが、地元の人にしか見えていない何かの方が遙かに多い」ことです。もし、今後もペットボトルのラベルで何かを伝えることを続けて行かれるのであれば、地元の人、特に若い世代の人たちが「なぜここで生きることにしたのか」から導いた何かを表し続けて行かれると、結果へとつながるのではないかと考えます。
 蒼天青雲は、「普通の人がペットボトルのラベルを作り上げるための手順」を導き出しました。是非、これを活用して頂ければと願っています。

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[準備中]
・「SUOMI CHAIRS」

<プロジェクトのリスト>
「イルマリ・タピオヴァーラ椅子展」 @Style shop. 2005.05.21-06.12
日本国内では見る機会のない作品を含めて全部で25点ほどを展示。

「ヨーロ・クッカプーロと柳原敏彦」 @GREEN WOODS 2005.11.12-13
クッカプーロさんの主要作品20点と柳原敏彦さんの木家具による構成。違う素材なのにデザインの根本で調和しているという妙。

「スオミと足塚由江」 @昭和堂 2006.06.23-25
フィンランドの家具と足塚由江さんのうつわでカフェをしました。

「米来留 いまはもういない」 @夏コミケット 2006.08.12発行
建築家ヴォーリズの失われてしまった作品を追い続けたドキュメント写真集。

「一脚の椅子 フィンユール」 @GREEN WOODS 2006.08.19-20
そこにあるだけで周りの空間を変える力を持つ椅子とは。

「カモナマイオフィス」 @某建て売り住宅 2006.09.16-18
「第二事業部の事務所が新築の住宅に移転する」 としたら?引っ越し系インスタレーション。

「1000脚の椅子」
工場の倉庫に眠る約1000脚の未完成の椅子を教材として活用しようという企画。
派生企画:智頭農林高校 学習成果展示 / 島根女子短大 Re:Chair展
 
「北欧の椅子と家具展」 @SOUKA-草花- 2006.12.08-11
古いビルのレストアされたペントハウスに北欧家具でLDを構築するインスタレーション。

「リートフェルトをつくって」 @SOUKA-草花- 2007.06.22-25
Rietveldさんの家具をダンボールで実寸模型に再現するワークショップ。

「机の帰還 」 @glass Onion 2007.07.19~
廃棄される学校机を店舗什器に再生する試み。

「シュレーディンガーの椅子 」 @Store Room 2007.09.07~
学校のようなお店に学校の椅子を納める。

「いまはもういない、のこと」 @夏コミケット 2007.08.19発行
ヴォーリズ建築の取材過程を記録したテキスト。

「キャンの岬はどっちですか。」@souka 07.11.17-18
「祈りの椅子」のプロトタイプに座ってみる。

「そしていまはもういない予告編」 @冬コミケット 2007.12.29

「そして、いまはもういない。」 @夏コミケット 2008.08.17
ヴォーリズ建築で失われて痕跡の儚いもの達。

「一脚の椅子 イルマリ・タピオヴァーラ」@「淀江の家」グラムデザイン 2008.10.04-05
ピルッカスツールを展示。

「いまはもういない、祈り」@冬コミケット 2008.12.30
キリスト教関係のヴォーリズ建築で知られざるもの達。

「古い家を借りて自分で直したら大きな黒板のある家ができた。ワタシの(^^)」@黒板亭 2008.03.--2009.04
廃屋寸前の賃貸住宅を順調に時を経たかのようにレストア。

「蒼天青雲 in 関西」@そうさく畑63 2009.04.05
既刊を関西地区で初配布。 山Dさんもお誘いして。

「ヴォーリズさんを探しに行った日々について」 2009.=
蒼天青雲にとっての「建築の保存」について話す。

「旧豊郷小学校写真集」@夏コミケット 2009.08.16
豊郷小学校=桜ヶ丘高校という繋がりと広がり。

ヴォーリズ建築文化全国ネットワーク第3回全国大会@近江八幡 2009.10.11
ヴォーリズファンしか居ない場によばれてヴォーリズさんの写真集を配布。

「みどりのはら」「近代残像 函館」「近代残像 長崎」@冬コミケット 2009.12.30
阿佐ヶ谷住宅へのオマージュ。函館と長崎、北と南の洋館が並ぶ港街。

「近代残像 京都」@コミティア92 2010.05.04
前世紀末の京都の町中における近代建築を紹介。

「米子市公会堂」 2010.07.15 +コミケット78
山陰に置かれた村野藤吾さんのグランドピアノについて。

「近代残像 神戸」@コミケット78 2010.08.15
神戸にある近代建築の様々な残り方と消え方。

「近代残像 湘南・箱根」@コミケット79 2010.12.31
太平洋に面して残る関東地方を取り巻いていた別荘地帯の痕跡。

「さくらはさく」@コミティア96 2011.05.05
千葉県浦安市の埋め立て地に咲く桜の花。

「マーリをつくって」@米子高等工業専門学校 2011.07.21
ダンボールで実物x0.8スケールの家具模型をつくる実習授業。

「近代残像 横浜」@コミケット80 2011.08.14
横浜で暮らした日々における近代建築との交わり。

「きらめけ!公会堂」@米子市公会堂 2011.10.21-23
写真集「米子市公会堂」を元にwebと連動したインスタレーションを実施。

「SUOMI CHAIR DESIGN 01. Alvar Aalto」 @コミティア98 2011.10.30
フィンランドの椅子デザインについて。

[以降、続いています


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